ミュージックバー 山渡は、繁華街・池袋の大きな通りに面しながら、地下に降りた途端、外の喧騒がすっと遠のく静かな大人の隠れ家です。
小さな看板の下、アナログレコードを真空管アンプで、ゆったりと味わっていただく音楽バーとして営業しています。
今回は、ジャズと付き合って四十年になるマスターが、「これからジャズを聴いてみたい」と思った人のために、雨の季節に聴きたいモダン・ジャズの名盤を5枚選びました。
① Stan Getz『Focus』(1961)
ゲッツといえばボサノヴァを思い浮かべる人が多いが、この作品は少し趣が違う。弦楽アンサンブルを背景に、サックスが物憂げに歌う。華やかさよりも陰影が際立ち、曇り空のような美しさがある。雨の日の静かな時間に耳を傾けたい一枚。
② Ben Webster『Soulville』(1957)
テナーサックスの温かく湿り気を帯びた音色が魅力。バラードでは息遣いまで聞こえてきそうなほど親密で、派手な演奏はないのに深く心に残る。窓の外の雨を眺めながら聴くと、その豊かな歌心がいっそう沁みてくる。
③ Jim Hall『Undercurrent』(1962)
ギターのジム・ホールと、ピアノのビル・エヴァンスによる珠玉のデュオ作品。二人は語り合うというより、同じ景色を眺めているようだ。音数は少ないが、そのぶん余韻が深い。雨の日に読書をするような感覚で聴きたい一枚。
④ Paul Desmond『Glad to Be Unhappy』(1964)
アルトサックスの音色がここまで優しく響くのかと思わされる名盤。タイトル曲をはじめ、全体を包む空気はどこか物憂げで、それでいて暗くなりすぎない。梅雨時の柔らかな雨と相性が良く、静かな余韻を残してくれる。
⑤ Tommy Flanagan『Overseas』(1957)
派手な技巧を見せつけるのではなく、歌心で聴かせるピアノ・トリオの名盤。フラナガンの端正なタッチは、雨の日の静かな午後によく似合う。華やかではないが、長く付き合うほど味わいが増していく作品だ。


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